イーグルL&L Systemは路面とトンネルと高精度に調査・解析する技術
イーグルL&L Systemとは、舗装やトンネル覆工コンクリートのひび割れ、路面のわだちが調査できる多機能型道路性状測定車です。
舗装やトンネル覆工コンクリートを撮影するラインセンサカメラと、路面の凹凸を測定するレーザー光切断ユニット、IRI計測ユニットを1台の車両に搭載し、法定速度で走りながら高精度な調査ができることが特徴です。
ラインセンサカメラは、通常のカメラが2次元の四角いセンサであるのに対してセンサがライン状になっており、移動しながら画像を撮影する仕組みです。さながらスキャナーのような感じで画像を撮影します。
レーザー光切断ユニットは、路面にレーザーのラインを照射し、わずかに斜めの角度から2次元センサでレーザーの形状を撮影します。路面に凹凸があればレーザーのラインがゆがみます。ゆがみを連続的に取得することで路面の形状を把握できる仕組みです。
製作にあたっては、カメラの検討など、様々な製品について実験を重ねました。単に性能が高ければよいということではありません。80~90kmの走行についていけるシャッタースピード、鮮明に撮影できる感度、かつデータ量が少なく安定して記録できることを条件に選びました。
選定したカメラでは、カラーの可視画像で1ピクセルあたり1mm×1mm、路面形状計測の分解能は1ピクセルあたり1.3mm×2.7mmの高精細で撮影しています。
高速道路では車は高速走行をしているため、微小な段差やわだちでもハンドル操作を取られて事故を招く恐れがあります。舗装やトンネルのひび割れ、損傷、劣化の位置と大きさを正確に読み取ることは、道路管理上、非常に重要と考えています。
開発に至った経緯
測定値の誤差の補正方法を検討
路面を評価する指標に乗り心地を評価するIRI(国際ラフネス指標)があります。IRIを計測する技術は以前からありましたが、より高精度に測定できるようにしたものがイーグルL&L Systemに搭載する縦断形状計測技術です。
従来、縦断形状を計測するには、車両の上下動を加速度計の計測値から推定し、変位計によって路面までの距離を得ることで、路面の縦断形状を推定するのが一般的でした。しかし、この方法では、走行速度や車両の加減速によって、推定した車両の動きと実際の車両の動きに誤差が生じ、精度が悪化する課題がありました。
開発の工夫や苦労
新しいアプローチで解決策を導く
別の方法で路面性状測定車の走行によって発生する誤差を補正することを検討しました。通常は進行方向に直角に配置するレーザー光切断ユニットを進行方向と平行に配置して、約40cmごとに路面の形状を細切れに計測します。この細切れの形状はワンショットであるから誤差を含まない真の形状です。細切れの形状をつなげると長い路面の形状になりますが、車両の前後の傾きや上下動により、つなぎ目はぴったりとは重なりません。そのつなぎ目をぴったりに重ねることができれば、路面の形状を正確に求められると考えました。
そこで採用したのはジャイロセンサ(角速度センサ)です。ジャイロセンサは車両の角度を測定できます。細切れの形状の角度をジャイロの値で補正すると、正しい角度の形状に修正することができます。正しい角度に修正した画像の重なり部分の上下の差は、車両の上下動と同一です。傾きと上下動を正確に補正することで、画像はぴったりと重なり、真値の路面の画像が出来上がります。路面性状測定車は全国に何十台とありますが、イーグルL&L Systemほど高精度なIRI計測機器は無いと思っています。当社の独自技術は特許を取得しています(特許第5557054号 路面性能確認試験 路性証第2618号)。
今後の展望
現場に有用な情報をリアルタイムで届けたい
イーグルL&L Systemでの高速道路の点検は3年に1回実施しています。これら高精細な計測データを解析し、その結果を適正な路面管理やトンネル点検に活用しています。しかし、路面は日々変化しており、数ヶ月で急に損傷が進むこともあります。そのため、イーグルL&L Systemの路面調査の機能のみを取り出し、機械と車両をコンパクトにしたスマート-イーグル type-Pを開発しました。
イーグルL&L Systemの原理はそのままに、解析を自動化したり、路面性状測定車の蛇行の補正を簡略化したりすることで調査費用を抑えました。これにより1カ月や1週間単位などリアルタイムで路面の調査が実施でき、そのデータを解析することで次にどこが壊れるかを予測することも可能になると考えています。また、一般道の調査にも対応しており、高速道路に限らず広く社会インフラのメンテナンスに貢献できるようになりました。
イーグルL&L Systemの開発により計測データの解析方法を確立できたからこそ、スマート-イーグル type-Pを実現できました。今後はさらに、積み重ねたデータをもとに路面損傷の予測技術を確立し、現場に有用な情報をタイムリーに提供していくことが当社の使命だと考えています。